「夫に『一度、病院で相談してみない?』と話すと、
『俺を病人扱いするな』と怒り、話になりません。もう何も言わない方がよいのでしょうか」
飲酒を心配して受診を勧めても、本人が怒ったり、話を打ち切ったりすることがあります。ご家族は、伝え方が悪かったのではないか、これ以上話すと関係が壊れるのではないかと悩んでしまいます。
ご家族が心配していたこと
今回の事例では、次のような状況が続いていました。
- 飲酒量が増え、休肝日をつくれなくなっている
- お酒の話をすると、不機嫌になったり強い口調になったりする
- 健康診断で肝機能の数値を指摘されても、受診しようとしない
- 飲酒後の言動について、翌日は覚えていないことがある
- 家族が本人の機嫌をうかがいながら生活している
ご家族は「病院へ行ってほしい」と何度も伝えましたが、そのたびに言い争いになりました。心配しているのに何もできないと感じ、ご家族自身も疲れていました。
相談で一緒に整理したこと
受診を拒むことと、困りごとがないことは同じではありません
本人が怒ったからといって、飲酒による問題がないとは限りません。一方で、ご家族が本人を診断したり、無理に病名を認めさせたりする必要もありません。
飲酒量だけでなく、健康、家族関係、仕事、お金、安全面など、実際に起きている変化を整理することが大切です。
「病院へ行かせること」だけを目標にしない
本人がすぐに受診へ応じない場合、一度の話し合いで結論を出そうとすると対立が強くなることがあります。まずは、ご家族が専門機関へ相談し、今後の関わり方を整理する方法があります。
ご家族だけの相談は、本人を責めるためではありません。ご家族の安全と生活を守りながら、できることを考えるための時間です。
声をかけるときに大切なこと
本人が酔っているときや、怒りが強くなっているときは、説得を続けないことが大切です。比較的落ち着いている時間に、病名や飲酒量をめぐる議論ではなく、ご家族が実際に見た出来事と心配している気持ちを短く伝えます。
伝え方の例
「病人扱いしたいのではなく、最近の体調が心配です」
「今すぐ答えを出してほしいわけではありません」
「あなたが行かなくても、私は自分の相談をしてみようと思っています」
本人が怒り始めたら、「今日はここまでにするね」と話を終えて構いません。怒りを鎮めるために約束を取り消したり、ご家族が我慢を重ねたりする必要はありません。
ご家族ができる最初の一歩
- 本人が酔っているときには、受診や断酒の話をしない
- 言い争いになった日時や、生活上で起きた出来事を記録する
- 本人を説得できなくても、ご家族だけで相談機関につながる
- 暴言や威圧がある場合は、安全に距離を取れる場所を考えておく
- ご家族自身の睡眠、食事、仕事や生活を守る
暴力や自傷・他害のおそれ、強い震え、けいれん、幻覚、意識の異常などがある場合は、ご家族だけで対応しようとせず、速やかに警察や医療機関へ相談してください。命に関わる緊急時は119番、身の危険がある場合は110番へ連絡してください。
この記事について/相談対応・執筆方針
運営:一般社団法人HELKEMA(ヘルケマ)
相談対応:ASK認定 依存症予防教育アドバイザー
HELKEMAでは、アルコール依存症の当事者としての回復経験を踏まえながら、ご本人やご家族の気持ちに寄り添った相談支援・情報発信を行っています。
この記事は、医師による診断や医療機関での治療に代わるものではありません。飲酒による健康上の問題や離脱症状などが疑われる場合は、医療機関や専門機関へご相談ください。
HELKEMA代表・相談対応者については、 代表プロフィール・活動紹介 をご覧ください。
医療機関・行政・自助グループなどの相談先を探している方へ
HELKEMAでは、アルコールの問題について相談できる医療機関・行政機関・自助グループなどの情報もまとめています。 ご本人やご家族の状況に合った相談先を探したい方は、 アルコール依存症 相談先一覧 もご覧ください。
受診を拒んでいても相談できます
HELKEMAの「お酒と暮らしの相談室」では、ご本人が相談や受診を望んでいない場合でも、ご家族からのご相談をお受けしています。今後どう関わればよいか、一緒に整理していきます。